「家事がないから楽」って本当?医療的ケア児の付き添い入院のリアルな1日と必要なサポート

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妊娠中、赤ちゃんに医療的ケアが必要になると分かり、
私の赤ちゃんは、生まれてすぐNICUに入院しました。
そして私たち夫婦は、在宅で安全に育児ができるように、
病院で必要なケアをしっかりと学びました。

私は元看護師ということもあり、基本的な処置には慣れていました。
でも、まさか自分の子どもに処置をする日が来るとは思っていませんでした。
夫はとても協力的で、NICUに一緒に通いながらケアを覚えてくれました。
みなさんも医療的ケアは初めての方も多いと思いますが、
本当にすごいことだと敬意を持っています。

それでも、胃管の交換や排便ケアなど、
一部の処置は私しかできないため、入院中は私が付き添っています。

そんな私によく聞かれるのがこの言葉。
「家事がない分、入院中は休めたんじゃない?」――
実は私も付き添い入院を体験する前はそう思っていました。

しかし、実際に付き添い入院を経験したご家族からは、
「思っていた以上に過酷だった」
「親には人権がないのかと思うほど」といった声も多く聞かれます。
医療的ケア児の入院において、家族が担う役割や負担はとても大きく、
付き添いが前提のようになっている現状には、
課題が残されているのが実情です。

今回は、そんな大変な“付き添い入院”の、
リアルな一日について、お伝えしたいと思います。

1.なぜ付き添い入院が必要なの?


1)ケアを知っている人が必要

医療的ケア児は、個々の状態に合ったケアがとても重要です。
親は、毎日決まった処置というよりも、
体調や状況に合わせてケアを工夫しながら行っています。

複雑な処置が必要な場合や急な入院ですと、
【看護師さんが細かな情報を把握しきれない】ことも多く、
多忙な業務の中、人手不足もあり、在宅で行っていた同様のケアを
看護師さんが行うのは難しいのが現状です。

安全な入院生活につなげるためにも、
医療的ケアを日常から把握している家族の存在が必要です。


2)心理的な安定のため

病院という環境は、医療的ケア児にとっても大きなストレスになります。
モニター音、点滴、検査、知らない顔…。

私の娘も環境の変化に敏感で、入院すると顔の表情が曇り、落ち着かなくなります。
そんなとき、そばにお母さんやお父さんがいることが、
子どもにとっての安心につながります。


3)事故やトラブルを防ぐため

たとえば、胃管が抜けかけていたり、呼吸器のマスクがずれていたり。
家族がそばにいたら、事故やトラブルにいち早く気づけることもあります。

医療的ケア児の場合、少しのトラブルが体調の急変につながることもあるので、
付き添いは“見守り”としての役割も大きいのです。

4)急変のサインに気づける


医療的ケア児の中には、さまざまな合併症を抱えているお子さんも多く、
風邪ひとつでも命にかかわる状態になることがあります。
そんなとき、**いつもそばで見ている家族だからこそ気づける
“わずかな異変”**があります。

たとえば、

  • 顔色の変化
  • 反応の鈍さや、いつもと違う表情
  • 泣き方が普段と違う

こうした小さなサインから、急変の前触れを察知することができることもあります。

医療者が常にそばにいるわけではない入院生活だからこそ、
家族がそばにいることが、命を守ることにつながることもあるのです。

5)家族自身の学びと準備のため 

また、付き添い入院には、家族自身が医療的ケアを安全に行うために
学ぶ時間という目的もあります。

たとえば、

  • 新しい処置(吸引・胃管の交換・体位調整など)を
    入院中に体験しながら覚える
  • 急変時にどんな対応が必要なのか、
    流れを病院で見ておく
  • 「退院後、家で安全にケアするにはどうしたらいいのか?」を、
    医師や看護師と相談しながら準備を進める

このように、入院中だからこそできる準備や学びがあります。

実際に、子どもと私が付き添い入院をしたときの1日の流れをお見せしますね

2.付き添い入院の1日の流れ

🌙 深夜〜早朝(0時〜6時)

  • 0:00 経管栄養の準備・ミルク注入
  • 1:00 胃管から脱気(げっぷができないため、空気を抜きます)
  • 2:00 経管栄養の片付け
  • 3:00〜4:00 腹部ケア・おむつ交換・経管栄養の準備・ミルク&薬の注入
  • 5:00 再び胃管から脱気
  • 6:00 経管栄養の片付け

⏰ この時間帯は、看護師さんが経管栄養の準備や片づけを手伝ってくれたり、
病棟が落ち着いている日には、ナースステーションで子どもを預かってくれることもあります。

でも、病室まで子どもの泣き声が聞こえてくると、どうしても気になってしまい
つらくなって一緒に病室に戻ることもあります。


🌅 朝(7時〜12時)

  • 7:00 体温測定・看護師さんとのやり取り
  • 8:00 腹部ケア・おむつ交換・経管栄養の準備・ミルク注入
  • 9:00 医師の回診・胃管から脱気・吸入
  • 10:00 経管栄養の片付け・看護師さんと1日の予定について共有
  • 11:00 夫が面会に来る
  • 12:00 排便ケア・おむつ交換・経管栄養準備・ミルク&薬注入

🌤 午後(13時〜18時)

  • 13:00 ようやくひと息…と思いきや呼び出しや検査対応もあり
  • 14:00 経管栄養の片付け・母親のシャワー(※貴重な自分時間)
  • 15:00 子どもの沐浴(準備と片付けは看護師さんがしてくれます)
  • 16:00 排便ケア・おむつ交換・経管栄養準備・ミルク注入・医師&看護師の訪室
  • 17:00 胃管から脱気

🌙 夜(18時〜23時)

  • 18:00 経管栄養片付け・物品補充など
  • 19:00 子どもが少しソワソワする時間
  • 20:00 排便ケア・おむつ交換・経管栄養準備・ミルク&薬注入
  • 21:00 胃管から脱気
  • 22:00 経管栄養片付け
  • 23:00 やっと横になる…でも深夜の準備はまたすぐに始まります

🔷休めない理由
・ケアの種類は少なくても、1日中くり返し続く
・医療スタッフの出入りがあり、ゆっくり休めない
家では夫と分担しているケアを、入院中はほぼ1人で全部することも
・寝るとSPO2が下がるため、子どもが寝ていても親はゆっくり眠れない
・SPO2低下時は、体位交換や呼吸器の調整が必要
コンビニごはん+寝不足で体調を崩しやすい
・常にぼーっとしていて、判断力が落ちていると感じる
・呼吸器や点滴、モニターがついており、ベッドから離れられないので
 気分転換ができない

一人では回らないので、
夫や看護師さんの支えがあって、なんとか無事にケアができています。

🔶サポートの大切さ
夫の面会中は貴重な仮眠時間
洗濯や食事の用意は夫がしてくれる
・看護師さんが夜間の経管栄養の準備・片付けを手伝ってくれる
・病棟が落ち着いている日は、子どもを深夜から朝まで預かってくれることも


そんな一日の中で、私が特につらいと感じたこと5つをご紹介します。

3.付き添い入院でつらいと感じること

1)寝不足

普段は夫婦ふたりで分担しているケアも、入院中はほとんど私ひとりでこなすことも。
ミルク・排便ケア・沐浴・モニター確認・処置の手伝い…
それに加えて、医師や看護師さんとのやりとりや状況報告まであり、
ゆっくり横になる時間さえほとんどありません。

また、夫や看護師さんが娘をみてくれることがありますが、
泣いていないか、「あのケアはやってくれたかな」と気になって、
不安で熟眠できず、寝不足が続きます。


2)娘が泣いて、不安で落ち着かない

慣れない病院、いつもと違う環境で、娘が寂しげな表情でよく泣きます。
泣いている理由がすぐに分からないときもあり、
「どこか苦しいのかな?」「おなかが痛いのかな?」と不安が押し寄せます。
いつ状態がよくなっておうちに帰れるのだろうかと
気持ちが休まる時間がほとんどないのも、大変さの一因です。


3)処置に母親も呼ばれる

子どもが泣いて処置ができないと、
「ママ、来てください」と呼ばれることがあります。
子どもが泣いている姿を見るのも、心がすり減ります。


4)身体がつらい

点滴や呼吸器、モニターがつながっているので、
なかなかベッドから離れて子どもをあやすことができません。
乳幼児ベッドの上で、子どもを抱っこであやしたり、添い寝をしたり。
気づけば、ほとんどベッドの上で過ごしているのかもしれないと感じます。
そして、急いでミルクの準備や尿量測定のためにベッドから降りるたびに、
足や腰にズキっとした痛みを感じます

また、処置を手伝ったりすることが多く
中腰の姿勢になる場面も少なくありません。
横になれたとしても気が張っていて、
体がしっかり回復する時間がとれないのが現実です。


5)母親自身の時間がない

お風呂、食事、休憩…すべてが後回しになってしまいます。
「もうご飯食べるのもつかれる…」
自分のことは後回し、という生活が続きます。
でも夫が私が体調を崩さないように、私の好物を買って用意してくれているので、
頑張って食べています。

疲れている割に、運動量は全体的に少ないので、
お腹がすかないのもあるあるですよね。


4.付き添い入院を頑張るママ・パパへ:心強い情報サイトのご紹介

付き添い入院は、想像以上に体力も気力も使います。
そんななか、他の人がどんなふうに過ごしているのかを知るだけでも、
心がふっと軽くなることがあります。

付き添い入院を頑張るママ・パパへ、「つきそい応援団」さんのサイトをおすすめします。
「つきそい応援団」さんのWebサイトでは、付き添い入院をされる方に向けて、
アドバイスや励ましのメッセージ、入院生活に役立つ情報をまとめた
ハンドブックを作成しています。

私が特に心に残ったのは、
**『付き添い生活応援パック』と『病院別掲示板』**です。

  • 付き添い生活応援パックでは、
     10日間以上泊まり込むご家族に、付き添い生活に役立つグッズを無償で届けてくれます。
     申し込んだ友人も多く、とても温かい気持ちになるそうです。
  • 病院別掲示板では、
     全国の病院の付き添い環境などについて、
    実際に付き添いを経験したご家族の声が集まっています。

「みんな頑張ってるんだな」「応援してくれる人がいるんだ」
「つらいのは、私たちだけじゃないんだ」と思えて、本当に心が救われました

同じような経験をしている方の声や、応援の言葉に、
見えないけれど、ちゃんとつながっている安心感をもらえました。

▶ 詳しくはこちら:付き添いのご家族へ | キープ・スマイリング

5.おわりに:付き添い入院は
「ひとりで頑張らなくていい」

体調を崩したり、入院するたびに、
何気ない日常がどれほど大切なものだったのかを実感します。

入院中は私自身、気持ちが不安定になることもありますが、
そんなときに支えてくれる夫や、
看護師さんをはじめとする医療スタッフのみなさんには心から感謝しています。
そして、いつも治療をがんばってくれている娘にも、
本当にありがとうの気持ちでいっぱいです。

付き添い入院は、保護者の体調や心にも負担がかかりやすいものです。
だからこそ、ひとりでがんばりすぎず、
頼れるサポートがあるなら、遠慮せずお力を借りましょう。

無理せず、できることを少しずつ。
一緒にがんばる仲間がいることを忘れないでくださいね。

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