医療的ケア児とは
医療的ケア児とは、病気や障がいにより、病院以外でも生活の中で特別な医療サポートを必要とする子どもたちのことです。家族は、日常的に医療的な処置や機械の管理を行う必要があります。その生活は決して簡単ではありませんが、たくさんの工夫と愛情にあふれています。
この写真は「酸素濃縮器」といい、在宅酸素療法で使われる機械のひとつです。自宅で酸素をつくり出して、チューブを通してお子さんに届けます。

おうちの医療的ケア(例)
在宅には、さまざまな医療的ケアがあります。
最初は戸惑いや不安を感じて、「絶対にできない!」と思ってしまうこともあるかもしれません。
そんなふうに感じるのは、自然なことです。
少しずつ慣れていけますが、うまくいかないときは「不安です」と声に出してくださいね。
医療的ケアにも、いろいろな方法があります。
ご家庭に合ったやり方を、みんなで一緒に見つけていきましょう。
退院したあとも、医療者をはじめ、支えてくれる人たちがそばで見守ってくれます。
どうか、一人で抱え込まないでください。

経管栄養・胃ろう
お口から食べるのがむずかしい場合、チューブを通して鼻や口、お腹から栄養を届けます。お子さんのペースに合わせて、決まった栄養だけではなく好きな味や家庭の味を少しずつ注入することもできる場合があります。家族と同じメニューを味わい、一緒に過ごす時間はかけがえのない”心の栄養”にもなります。お子さんの「食べる楽しみ」や「その子らしさ」を大切にできます。

パルスオキシメーター
脈拍や呼吸を測るセンサーを使って、お子さんの体のようすを見守ってくれる道具です。小さな変化に気づきやすくなり、家族の安心にもつながります。夜間や、体調が悪い時だけ使用することもあります。

呼吸器
機械で呼吸をサポートすることで、呼吸が楽になり、遊んだり外に出かけたりすることもできます。お子さんの「やってみたい」という気持ちを、応援していきます。
お子さんの体調に合わせて、医療スタッフが呼吸器の設定をそのつど調整します。呼吸器が不快なときには、ほかの機器に変えたり、マスクの調整や姿勢の工夫をしたりして、お子さんができるだけ心地よく過ごせる方法を一緒に考えていきます。
不安な日も、思うようにいかない日も、
「まさか私たちの子どもが…」それは、突然訪れた出来事かもしれません。
突然の状態変化による入院や、頻繁な通院も、気づけば日常になっていました。
苦しむわが子の姿を見るたび、胸が締めつけられ、まるで自分が痛みを抱えているような気持ちになります。
「私が頑張らないと、この子の命が守れない」
「また急変したらどうしよう」
そんな不安が常に心の中にあり、気を抜ける瞬間はありませんでした。
ケアに自信が持てず、うまくできない自分に苛立つ日々。
心にも体にも余裕がなく、一日をどうにか乗り越えることで精一杯でした。
そして、そんな私と同じように、夫(妻)も疲れているのが伝わってきて――それもまた、心配の種になっていました。
「わが家らしい暮らし」を諦めない
決して「家に閉じこもる生活」ではありません。
医療的ケア児と暮らす家庭は、全国に約2万人(厚生労働省2021年調査)いるとされています。決して少なくないはずなのに、孤立を感じてしまうことも少なくありません。
かつては、親がすべてを担い、家の中に閉じこもるような生活を強いられることも多くありました。周囲には同じ境遇の人が見つからず、制度や支援の情報にもなかなか手が届かない。
けれど今、医療や制度が少しずつ進み、「できなかった未来」が少しずつ「できる未来」に変わってきています。
外に出ること、家族と笑うこと、親が自分の人生を大事にすること。
そんな「当たり前の幸せ」を大切にできるように。
私たちの経験や工夫を共有しながら、一緒に「わが家らしい暮らし方」を探していきましょう。今日からできる小さなことから、あなたと一緒にその歩みを続けていきたいと思います。
はじめてがいっぱい
医療的ケアをはじめ、制度や暮らしの工夫、気持ちとの向き合い方。
地域や社会、そして同じような立場の人たちとの支え合い——
子どもとの出会いを通して、私たちの世界は思っていたよりずっと広がり、 温かなつながりが生まれました。
制度
仕事を休まざるをえなかったり、急な入院の付き添いや予期しない出費が重なったり…。
環境が整うまでの間、経済的な不安を抱えることも少なくありません。
医療費の助成や障害児福祉手当など、子どもの状態や親の経済的状況などに応じたさまざまな支援制度があります。まずは病院や自治体、相談支援専門員などに相談してみましょう。
最近では、医療的ケア児や持病があっても加入できる保険や共済も少しずつ増えてきました。「何かあったとき」の支えになることもあります。
「もし私が体調を崩したら、この子の生活はどうなるのだろう」と不安になることもあります。
ひとりでは生活が成り立たないからこそ、支えてくれる人の存在が必要です。
家族が一息つくための「レスパイト(休息)支援」が利用できる場合もあります。短期入所やショートステイ、訪問型の一時預かりなど、「少しの間だけ安心してまかせられる場所」があることは、心の支えにもなります。
子育てしながら働くには、会社の制度や職場の理解も大切です。育児休業の延長や看護休暇、時短勤務などの法的制度に加え、職場の柔軟な対応によって働き続けられることもあります。
どんな人も、安心して暮らしていけるように。
私たちの暮らしを支える制度や仕組みは、社会の中に用意されています。
暮らしの工夫
最近では、子ども用のユニバーサルデザインの服や靴も増えてきました。着脱しやすく、かわいくてかっこいい——そんなおしゃれを楽しめる選択肢が広がっています。ハンドメイドで工夫されたアイテムを販売している方もいて、ぴったり合うものが見つかるとうれしくなります。
福祉用具の助成制度を利用すれば、体の状態に合った椅子やベッド、たくさんの医療機器を載せられるバギーなどをそろえることができます。
初めて高額な医療機器を扱うときには、不安もつきものです。酸素ボンベの保管場所は、火のそばを避けて設置できるよう、業者さんと相談しながら決めると安心です。また、災害時に備えた準備や支援体制を整えておくことで、いざというときも慌てずに行動できます。
医師・看護師・薬剤師・保育士・リハビリスタッフなどが家に来てくれることで、通院の負担が減り、安心して療育やケアを受けられることもあります。
生活で困りごとがあれば相談支援専門員にも伝えましょう。一緒にどうすればいいか解決策を考えてくれるはずです。
おでかけの際には、介護タクシーの利用や電車・飛行機でのサポートを受けることも可能です。
医療機器をつけていてもきょうだいと、一緒に楽しく過ごせる場所が少しずつ増えてきました。
家族みんなで笑い合える時間や夢を、これからも大切にしていきたいですね。
気持ちとの向き合い方
医療的ケアが必要な子どもとの出会い方はさまざまです。妊娠中に分かることもあれば、出産後に知らされることも、成長の途中で突然必要になることもあります。
最初は受け入れられず、「どうして…」「こんなはずじゃなかった」と感じるのは自然なこと。前向きな言葉がつらく感じる日もありますし、逆に心ない言葉で傷つくこともあるでしょう。
親だって、いつも強くいられるわけではありません。悲しい日、誰にも会いたくない日、全部投げ出したくなる日もあります。
「もっとああすればよかった」と後悔したり、医療者や家族と意見がかみ合わなかったり「自分だけが置いていかれる」ような気持ちになることも。職場や周囲の理解が得られず、心が折れそうになることもあるでしょう。
そしてふと、自分自身や家族、子どものやりたいことや夢は諦めなければならないのかもしれない——
そんな不安と葛藤に押しつぶされそうになることもあります。
話しても分かり合えない人がいることもあります。
でも、多くの人と出会う中で、信頼できる存在に出会えるかもしれません。その出会いが、思わぬ気づきや新しいヒントをもたらすこともあります。
あなたとご家族、お子さんの進むべき道が見つかりますように。
不安の先の希望を信じて
「生きる」とは。どうして病気であるのか。
その答えのない問いに向き合う日々のなかで、
描いた新しい未来や、大切な人との絆が、前を向く力になります。
医療的ケアを必要とするお子さんを育てる中で、
悲しみや戸惑いを感じることは、きっと避けられないものです。
けれど同時に、夢や希望が生まれます。
あなたとご家族、お子さんの輝く日々が、これからも穏やかに続いていきますように。
家族構成
どこにでもいるごく普通の夫婦のもとに、
医療的ケアが必要な可愛い子供が生まれました!

父親
30代 会社員

母親
30代 会社員(育休中)

娘
1歳 一生懸命生がんばってます♡
ブログ一覧

医療的ケア児ママが壊れそうになった日々と、小さな対処法6選
医療的ケア児の育児は、命を守る責任と向き合う日々です。 SNSで「毎日何百回も吸引している。」「医療的ケア児と3人の子どもをワンオペしている。」と語るママさんを見て、「すごい、私も頑張らなきゃ」と思いました。「これくらい […]

「医師も悩んでいる」―医療的ケア児と向き合う小児科医のリアル
医療的ケア児の出産や育児において、小児科医の存在は欠かせません。妊娠中の治療方針の決定、出産、NICUでの管理、退院後の在宅医療まで──医師はずっと、私たちと子どもの人生を支えてくれます。 でも、私たちは、その医師が抱え […]

【コラム】赤ちゃんの記憶と、親の願い~記憶に残らなくても、心に残るもの
私の娘は、胃食道逆流症(GERD)があり、さらに十二指腸に狭窄があります。呑気や便秘もあり、ミルクをあげるたびに吐いてしまうことが多いんです。嘔吐やむせがあるたびに、誤嚥性肺炎になるのではないか不安でいっぱいです。 その […]