【コラム】赤ちゃんの記憶と、親の願い~記憶に残らなくても、心に残るもの

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私の娘は、胃食道逆流症(GERD)があり、
さらに十二指腸に狭窄があります。
呑気や便秘もあり、ミルクをあげるたびに吐いてしまうことが多いんです。
嘔吐やむせがあるたびに、誤嚥性肺炎になるのではないか
不安でいっぱいです。

その対策のひとつに「胃ろうの造設」があります。
でも、やっぱり手術となると「かわいそう」という気持ちや、
周囲の反対の声、緊急性もないため、
なかなか決心がつきませんでした。

最近、娘は笑ったり、泣いたり、
こちらの声かけに反応したり──
表情も感情もどんどん豊かになってきました。
その姿を見ながらふと思うのです。

「なにも覚えていない、もっと早めの時期に手術していれば、
娘にとっても、良かったのかな」と。

1)赤ちゃんの記憶力って?

赤ちゃんは何も覚えていない──そんなイメージを持っている方も多いかもしれません。

けれど実際には、こんな調査もあります。

  • 生後2か月児:約1〜3日
  • 生後3か月児:約7日
  • 生後6か月児:約14日

つまり、赤ちゃんも「覚える力」はちゃんと持っているんです。
※引用元:乳児の記憶|脳と心の科学について学ぼう

ただし、脳の発達がまだ未熟なため、「記憶がうまく定着していない(記銘の失敗)」や
「記憶を貯蔵する神経ネットワークが後に発達したものに取り込まれ、
思い出せない(検索の失敗)」とする考えがあるそうです。

※引用元:日本心理学会『子どものときのことを覚えていないのはなぜ?』
https://psych.or.jp/interest/ff-25/

2)胃ろう造設は、生後すぐにしたほうがいいの?

「覚えていないうちに。
つらい手術は早くした方がいい」と思うのは正しいのでしょうか?

答えは、必ずしもそうとは限りません。
胃ろう増設に関しては、年齢が低いほど、
・カテーテル周囲に皮膚の炎症が起こりやすい
・肉芽が形成されやすい
また、成長に伴い、
胃ろうの位置が動き、再手術が必要な場合もあるそうです。

参考:胃瘻の管理について|埼玉県小児在宅医療支援研究会
https://www.happy-at-home.org/6_2.html

緊急性が高い場合などは、生後すぐに胃ろう造設をするケースもありますが、
手術や術後の合併症リスクが高い場合もあります。

ですので、医師とよく相談しながら、
「今この子にとってベストな方法は何か?」を慎重に考えることがとても大切です。

3)おわりに

「辛いことは記憶に残ってほしくない」
「でも、楽しいことはたくさん覚えていてほしい」
親として、そんな矛盾した願いを抱えてしまうことがあります。

小さな体でがんばる我が子を見ていると、
「これ以上、できるだけ痛いことや怖いことは経験させたくない」と思います。

一般に、赤ちゃんの記憶には「感覚的な体験」が深く関わっているとされています。
視覚・聴覚・触覚などを通じた刺激に加え、
「気持ちいい」「不快だった」といった感情をともなう体験は、
より強く印象に残るそうです。
※参考:赤ちゃんの記憶力はどう発達する? | 赤ちゃん成長ナビ(小児科専門医師 監修)

娘の主治医は、2歳になったら胃ろうを検討しようと言っています。
手術は怖いし、術後の経過次第によって変わりますが、
入院期間は大体1か月くらい必要だそうです。

決断には勇気がいります。
それでも「生きるってこんなにあたたかいんだ」と思える日々を、
娘に届けられるように。
私たちなりの選択を、これからも重ねていきたいと思います。



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