【インタビュー】叔父/30代後半/会社員
1)妹の妊娠中について
姪が生まれるのを、家族みんなで楽しみにしていました。僕も、
「可愛い服やおもちゃをたくさん買ってあげたい」「一緒に遊びたいな」
と、ワクワクしていました。
2)姪が医療的ケア児だと聞いてどう思いましたか?
最初は、本当に驚きました。
妹は看護師なので多少の知識はあると思いますが、
僕ら家族は医療のことなんて全然わからないので…。
妹の夫も、冷静そうに見えたけど、
きっと驚いていたと思います。
妹は「元気な赤ちゃんを産んであげられなくて申し訳ない」
と泣いていて、「そんなこと誰のせいでもないよ」と声をかけましたが、
気持ちの整理はすぐにはつかない様子でした。
僕もネットで「医療的ケア児」について少し調べてみたのですが、
写真を見て「こんなにたくさんの処置をするんだ」と正直ショックを受けました。
妹には言えませんでしたけど…。
どこまで延命治療をするのかも気になりましたが、
妹夫婦もいっぱいいっぱいだろうから、
何かあれば力になりたいと思っていました。
3)出産後について
「心臓の手術をしないと今年までの命かもしれない」
と医師に言われたようで、妹は「手術をしたい」と話していました。
でも周囲からは「重症心身障がい児を延命して育てられるのか、よく考えろ」
と言われたようで、すごく傷ついていたみたいです。
「夫とちゃんと話し合いなさい」とも言われたらしく、
妹の夫は「できることはしてあげたい」と言ってくれたそうです。
結果的に手術はしなくてもよくなったみたいですが、
「こんなに小さな体に傷をつけるなんて…」という周囲の言葉に、
出産前も出産後も、妹はたくさん傷ついていました。
「もう夫以外とは話したくない」と言っていたこともありました。
そんななか、両親も心配して、僕にいろいろ聞いてくるんです。
妹の気持ちもわかるし、両親の不安も理解できる。
僕はその板挟みで、正直つらかったです。
4)退院してからについて
初めて会ったとき、「なんて小さいんだろう。でも可愛い。」と思いました。
病気によって特徴的な顔貌があるみたいですが、
妹夫婦に似た美人な子でしたね。
姪も妹夫婦も、毎日を精一杯生きている。その姿を見ると、
「どうかつらい思いをしませんように」と心から願っています。
あと、あんまり人に相談しないほうがいいとアドバイスしました。
相談しても、言ってほしい言葉は言ってくれない。
自分たちの人生は、自分たちで決める。
双方の両親(祖父母)にも、夫婦で決めてから、伝えたほうがいいと言いました。
5)今の様子について
妹はSNSで同じ立場の友達もできて、楽しそうにしています。
でも最近、その中の大切な友人を亡くして、ひどく落ち込んでいるようです。
姪も、体調がいいとは言えないようで…。
つらいことが少しでも減ってくれたらと願っています。
妹の夫は旅行が趣味なんですが、
医療的ケアがあると遠出は難しいみたいです。
でも市内の楽しい場所に出かけたりして、
家族で工夫しながら過ごしているようです。
妹の夫も、医療的ケアをしっかり担っていて、
「これは本当に愛だな」と感じます。
僕のような素人には怖くてなかなかできないことです。
これも立派な“育児”なんですね。
■ 編集後記
今回は、兄という立場から見た私たち家族の物語をお届けしました。
妊娠中から出産後、そして今も時々、
兄は私と家族の間で板挟みになりながらも、
どちらか一方に偏ることなく、”家族”を大切にしてくれています。
言葉にするのが難しい葛藤や迷い、
繊細な家族の関係性――それを受け止めながら、
静かにそばにいてくれた兄の存在に、心から感謝しています。
医療的ケア児を育てる日々には、
見えない不安や孤独がつきまといます。
でも、こうして「何かあれば力になるよ」と思ってくれる人が身近にいてくれることが、
どれほど心強かったか。
兄のように“意見を尊重して、寄り添おうとしてくれた人”
の存在が、私たち家族の支えになっていました。
これからもきっと、いろいろなことがあると思いますが、
大切な人たちと一緒に歩んでいけたらと思っています。
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