「それ、言っちゃうの?」―信頼を壊す一言から考える守秘義務

みなさんは、お子さんが通っている病院や利用している施設にお知り合いはいますか?もしくは直接の知り合いではなくても、親族の中に知人や友人が勤務している場合もあります。
今回は、私が体験した守秘義務に関するお話しと対策をお伝えしたいと思います。
目次
1.通っている病院に知り合いがいるメリット
1)安心感や心理的な支えになる
- 知っている顔があることで、初診や入院など不安な場面で心が落ち着く。
- 「あの人がいるから大丈夫」と感じられるのは、医療への信頼感につながる。
- 評判を聞くことができる
2)相談しやすい雰囲気がある
- 診療内容に関わらない範囲で、病院について気軽に聞けることも。
- ちょっとしたサポート(授乳室、連絡の仕方など)を教えてもらえることもある。
3)子どもが安心できる
- 子どもにとっても「知っている大人がいる場所」は安心感を与える。
- 医療行為への恐怖が軽減される場合も。
2.通っている病院に知り合いがいるデメリット
1)境界があいまいになりやすい
- プライベートと仕事の線引きが難しく、うっかり守秘義務のラインを越えてしまう危険も。
- 逆にこちらも、「友達だから聞いてもいい」と思ってしまいがち。
2)噂や情報共有のリスク
- 善意でも、「○○ちゃん最近入院してたね」などが第三者に伝わる可能性がある。
- 信頼関係が一瞬で壊れることもある。
3)医療機関を変えづらくなる
- トラブルが起きた時、気まずくて転院しにくい。
- 「関係性があるからこそ言いにくい」場面が出てくる。
3.実際に起きた守秘義務に関するトラブル
ある日、私はいつものようにスーパーで買い物をしていました。
すると、子どもが通っている病院の看護師さんが、偶然うちの親族と話しているのを見かけました。
そして耳に飛び込んできた言葉に、心が凍りつきました。
「○○ちゃん、最近入院してたんだって? もう退院したみたいでよかったね」
その言葉は、私の子どものことでした。
家族の中でもごく一部しか知らない入院のこと。
それを、病院の外で、親族に話していたのです。
4.夫婦どちらかが許可したなら守秘義務違反にならない?
その場では何も言えませんでした。
でも家に帰ってから、涙が止まりませんでした。
医療者にはたくさんの秘密を話しています。
病気のこと、家族の事情、時には経済的な悩みまで。
それを預けられるのは、「絶対に外に漏らさない」という信頼があるからです。
今まで何を勝手にバラされたのかと不安にもなります。
夫に相談すると「そんなことなら言ってもいいよ。気にしすぎ。心配してるだけ」と言われました。
でも、私はそうは思いません。
“夫がいいから大丈夫”で済む話ではありません。
医療情報は「家族の誰かがOKならいい」ではなく、本人もしくは夫と妻両方の同意が前提です。
5.「そんなことで怒るなんて。家族だからいいじゃない」
医療は信頼の上に成り立つもの。
一度その信頼が壊れると、修復には時間も勇気も必要です。
「そんなことで怒るなんて、心が狭い。親族も家族なんだからいいじゃない。」
と、言う人もいるでしょう。
でも、違うんです。
それは「ちょっとしたおしゃべり」ではなく、大切な個人情報の漏えいです。
業務上知り得たセンシティブな内容を勝手に共有される苦しさを、少しでも想像してもらいたいです。
6.対応策①:どこまでが「アウト」なのか確認する
「最近体調悪そうだね」
「入院してたんだって?」
「退院おめでとう」
「最近大変みたいだね」
「この間、急に受診したんだね」
こうした言葉も、医療従事者が仕事中に得た情報を元に話すなら、守秘義務違反になる可能性があります。
たとえ悪気がなくても、聞いた本人がどう受け取るかによっては、深く傷つけてしまうのです。
しかし、これは”グレーゾーン”にもなるため、あらかじめどこまでを許容するか決めることが必要です。
7.対応策②:情報漏洩を予防する
人は誰でもうっかりすることがあります。
だからこそ、**「知り合いが患者や家族にいるときは、あらかじめどう予防するかを考えておく」**ことが大切です。
例えば、
- 「第三者には、子どものことに関して一切話さない」
- 「第三者に聞かれても、両方の親の同意がなければ一切情報提供をしない」
を周知してもらうよう伝えました。
8.対応策③:情報漏洩をされた場合
- 「もし話してしまったら、すぐに誠実に謝罪し、上司や関係部署に報告する」
といったルールを明確にしておくことで、「言ってしまった」事実を隠すよりも、すぐに謝罪し、関係を修復する努力をしてもらえるはずです。
しかし、相手が情報漏洩を秘密にしていたり、言われた側が先に気づいてしまった場合もあります。私は、なるべく大事にせず今後一切の情報漏洩をやめてほしいと思ったため、以下のメールを関係者に共有してもらいました。
他の場所でトラブルがあったため、こちらでも共有させていただきます。
父親が許可している場合でも、母親の許可がない限り、業務上知り得た情報を第三者(親族・共通の知人など)に伝えることのないようお願いいたします。
また、第三者から(娘)や両親について質問された場合も、公言や情報提供はなさらないようお願いいたします。
たとえば、私たちの親族に対して「(娘)が入院しましたね」「退院おめでとうございます」「児童発達支援で楽しそうですね」「もうすぐご出産ですね」といった、何気ない会話も控えていただけますと幸いです。こうしたやり取りは悪意がなくても、誤解を招いたり、関係者間の信頼関係にひびが入ったりすることがあります。今後も良好な関係を続けていくためにも、ご配慮をお願いいたします。
9.おわりに
医療者も人間です。
でも、「人の命や生活に関わる立場」である以上、
その「うっかり」が誰かの心を深く傷つけることもある。
だからこそ、
守秘義務があります。
お互いが気持ちよく関われるように、
「話していいこと」「話してはいけないこと」を普段から意識し、
もし起きてしまった時には、誠実に対応する。
そんな小さな積み重ねが、
信頼できる医療を支えていくのだと思います。
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