
みなさんは、訪問診療を利用していますか?
NICU入院中、退院を前に医師から「訪問診療を使いましょう」と提案がありました。 当時は「家まで先生が来てくれて、どこまでやってくれるの?」「大学病院での診察とどう違うの?」と、疑問でいっぱいでした。
この記事では、我が家が訪問診療を導入したときの体験をもとに、
- 誰が使えるのか
- どんな準備が必要か
- 実際の診療内容
- 緊急時の対応
などを、できるだけわかりやすくまとめました。
目次
1.訪問診療は誰でも使えるの?
訪問診療は「通院が困難な方」が対象とされていますが、実際には通院が一人でできなかったり、移動に医療的なリスクがある場合にも、医師の判断で利用が勧められることがあります。わが家の場合も、医師から「訪問診療のほうが安全で適切」と提案がありました。
なお、在宅医療においては、高齢者と比べて小児が訪問診療や往診を受けるケースは非常に少ないのが現状です。 これは、訪問診療を担う医師の多くが高齢者を主な対象としており、小児に対応できる医師や医療機関が限られているためです。また、小児在宅医療は疾患が多様かつ専門性が高いため、訪問診療として受け入れ先が地域に一つもないというケースも少なくありません。地域差も大きく、小児に対応している訪問診療所は少ない現状があるため、訪問診療を利用できないでいる友人も多数います。
私の地域では一か所だけ訪問診療を行っている医療機関があり、そちらにお願いしました。事前に医師や退院支援の職員と相談しておくと安心です。
2.退院前カンファレンスと支援チームの顔合わせ
NICU退院前には、退院後の生活を支えるためのカンファレンスが行われました。
参加者は、病院の主治医、看護師、保健師、相談員、訪問看護師、訪問診療医など。支援チームと顔を合わせながら、次のことを話します。
- 妊娠から今までの経過
- 現在の医療的ケアと今後必要になる医療や福祉
- 在宅生活での必要な支援、制度(手帳の申請など)
- 大学病院と訪問診療の役割分担の確認(我が家の場合は大学病院が主治医となり、治療をメインで担当します。訪問診療は在宅生活を支えるため、在宅で必要な医療機器の準備やワクチン接種などを行います。)
- 家族の受け止めやケアの状況、家庭環境
- 家族が大切にしていること、緊急時の延命処置の希望 など
そして、家族と医療的ケア児と顔合わせを行い、今後の診療方針や訪問スケジュール、連絡体制について話し合います。
訪問診療では、
- 月2回の定期診察
- 臨時処方(軟膏・浣腸など)※心臓や神経など通院している科の薬は大学病院が処方
- 健康相談や在宅でのケアの確認
- ワクチン接種
- 医療材料の提供(吸引チューブ・経管栄養のグッズなど)
- 緊急時の対応方針の確認(訪問診療が大学病院に搬送可能か確認するなど)
- 在宅で使用する医療機器(酸素や吸引器など)の契約や管理
- 家族会・勉強会・イベント など
など、在宅で安心して生活するために幅広く支援してもらえることがわかり、嬉しかったです。
3.初回訪問診療の流れ
初回は、退院翌日に来てくれました。(他の利用者の訪問スケジュールとの兼ね合いがある)
まずは契約・在宅療養計画書や同意書への署名を行い、サービス内容の説明があります。その後、実際の診察が始まります。
娘の場合は、主に
- 呼吸状態の確認
- 医療機器の使用状況(退院した当時はハイフローを利用していました)
- 心音の確認
- 腹部の確認
- 脈・SPO2・etCO2(呼気中二酸化炭素)の測定
- 在宅生活で困っていることがないか
- 緊急連絡先の再確認 など
など丁寧な診察とじっくり家族の思いを聞いてくれました。
4.日常的なやりとりと連絡方法
我が家では、月2回訪問診療があります。しかし、それ以外にも連絡アプリや電話でやりとりをしています。
- 訪問前日に連絡アプリで医療材料や処方薬の希望を伝える
- 診察がない週も、体調の変化や心配ごとがあれば、連絡アプリや電話で相談。
- 娘の状態が”変だな。診てもらいたいな”と思ったときは、連絡アプリで娘の画像を送る。動画はアプリでは送れないため、訪問看護師を通じて、訪問診療医師に確認してもらう。
- 医師の判断で、電話診察のみで薬の処方をしてくれることがある。処方箋は薬局にFAXで送られ、訪問薬局が薬を自宅に届けてくれる。
- 定期的に家族会・イベント・勉強会のお知らせが連絡アプリで通知される。
気軽に相談できるので、とても心強い存在です。
5.緊急時の対応について
夜間や休日に、急な発熱やけいれんなどがあった場合、医師直通の電話で報告をします。
必要と判断されれば、いつでも緊急訪問をしてもらえることがあります。
「すぐに救急車を呼んだ方がいい」と判断された場合は、家族が救急車に電話をかけている間に、訪問診療の医師が大学病院と連携して受診・入院の準備を整えてくれます。
訪問診療と大学病院が連携していることで、安心感があります。
6.通常の訪問診療の流れ
訪問当日は、おおよそ以下のような流れで診察が行われます。
- 医師・同行スタッフが到着(遅れるときは事前に連絡あり)
- 洗面台で手洗いと手指消毒
- 診察(呼吸・心音・腹部・皮膚・全身チェック)
- 大学病院での言われたことの報告・処方薬の確認・医療材料の提供・ワクチン接種
- 在宅生活・医療機器の相談(現在は呼吸器の練習中のため拒否があることを相談)
- 次回の訪問診療日の確認
診察時間は15〜30分程度。おうちで、落ち着いて相談できるのが、大学病院との違いだと感じました。

最近は、児童発達支援について相談しています。どこの事業所なら安心か、回数についても話し合っています。
訪問診療の同行者は主に医師のサポートをしますが、職種は様々です。
看護師、保健師、リハビリスタッフ、栄養士、保育士などチーム医療で様々な方が関わってくれます。
7.我が家が気をつけていること
訪問診療の日に特別な準備はしていませんが、次の点には気をつけています。
- 座布団の準備:医師と同行スタッフが床に座るため
- 洗面台の掃除:手洗い・消毒の場として使用
- 換気と室温:感染予防のため換気+扇風機

お茶やお菓子の提供はしていません。感染対策の観点や、家庭間での差を避けるためにも不要とされています。
8.訪問診療を受けるメリット
訪問診療のいちばんのメリットは、「家にいながら、安心して医療的な支援が受けられる」ことです。
- 在宅環境に合った診療が受けられる
家庭での過ごし方やケア、医療機器の使用状況、今後の生活まで含めて医師と相談できるため、より実際の生活に即したアドバイスや対応をしてもらえます。 - 待ち時間がなく、時間も柔軟
大学病院のように長時間待つ必要がなく、家庭の生活リズムにも配慮してくれます。診察の時間も、相談内容に応じて柔軟に対応してくれる印象です。 - 緊急時も頼れる安心感
体調変化があったときにすぐ連絡がとれ、大学病院との連携もスムーズ。受診の必要性や救急搬送の判断もしてもらえるため、「判断を任せられる」安心感があります。 - 処方対応
病院に行かなくても診察相談や薬、医療材料をもらえるので、スムーズに生活ができます。 - 在宅でゆっくり話し合える
家というリラックスした環境の中で、家族の思いや不安を丁寧に聞いてもらえる時間があります。 - 入院せずに機器の調整ができる
呼吸器など在宅で使用している医療機器の設定変更や調整にも対応してもらえるため、入院せずに解決できることもあります。 - 家族の負担が軽減
移動が不要になることで、通院に付き添う家族の時間的・体力的負担も減ります。兄弟児がいる家庭でも、予定の調整がしやすくなります。 - 地域とのつながりができる
訪問看護、訪問薬局、相談支援、など他の在宅支援とも連携しやすく、家族会でイベントや友人もでき地域全体で支えてもらえる体制が整っていきます。
医療費について:
我が家は小児医療費助成や小児慢性特定疾病医療費助成を使っており、自己負担は交通費のみです。
9.訪問診療のデメリット・注意点
- 検査内容が限られている
血液検査や画像検査など、高度な検査は病院で行う必要があります。 - チーム診療のため忙しそうな時もある
診察中に電話対応が入ったり、時間がタイトなときもあります。 - 医師によって対応に差があることも
チームで複数の医師が診察に来る場合、方針や説明の仕方に違いを感じることもあります。
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10.おわりに
訪問診療は、在宅医療を支えてくれる非常に大切なサービスです。
医療的ケア児の娘を在宅で育てることに最初は不安がありましたが、医師がすぐに家に来てくれるため、心の負担がとても軽くなりました。通院ができるから不要というわけではなく、「家での生活の中で診てもらえる安心感」があります。
今後も医療の発展に伴い、小児在宅医療のニーズはさらに高まっていくと考えられています。
しかし現時点では、地域によって支援の差が大きく、小児に対応できる訪問診療所がないエリアもあります。
だからこそ、子どもを取り巻く医療体制がもっと整い、どこに住んでいても必要な医療が届く社会になってほしいと願っています。
これから訪問診療を検討している方にとって、少しでも参考になれば嬉しいです。
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