赤ちゃんの嘔吐と胃食道逆流症|原因・対策・家庭でできる工夫

Latest Comments

表示できるコメントはありません。

みなさんは、医師に困っていることを相談しても
「それは仕方ないね」と言われた経験ありますか?

私の娘は、生まれたときから、ミルクをあげた後の嘔吐に苦しんでいました。
何人もの医師に相談しましたが、中には「赤ちゃんはみんな吐きますよ」「仕方ないことですよ。脱水になったらまた受診してください」と言う方もいました。

その言葉を聞くたびに、「本当にそれでいいのだろうか」と迷いながらも、私たち夫婦は納得するしかないのかと感じていました。

そこで今回は、嘔吐のメカニズムと対処法、そして医師に「仕方ない」と言われても諦めきれなかった私たちが実際にとった行動についてお伝えします。
同じように赤ちゃんの嘔吐で悩んでいる方に、少しでも参考になれば嬉しいです。

1.嘔吐の原因

嘔吐の原因は大きく2種類に分けられます。

  1. 反射性嘔吐
     ・胃腸の動きが低下している場合
     ・腹圧が高まった場合(円背、便秘、イレウス、くしゃみ、泣く、げっぷがたまるなど)
  2. 中枢性嘔吐
     ・脳の嘔吐中枢が刺激されることで起こる。胃腸や腹圧の状態に関係ないのがポイント
    ショックな画像や強い嫌悪感などによる嘔吐は、視覚や感情による刺激が脳に伝わり、延髄にある嘔吐中枢が反応して起こる

反射性と中枢性嘔吐の両方が関係する場合もあります。
嘔吐が起きたときは、体の中で何が起きているのか原因を考えることが大切です。

また、経管栄養をしているお子さんは、胃管の位置が浅いことでも、嘔吐する場合があるそうです。
成長に伴い、挿入する長さも変わるので、しっかりレントゲンで医師に確認してもらいましょう。

2.観察ポイント

・内容物(出血の有無)・におい・量

・消化具合(未消化物の有無)

・元気さ

・尿はでているか・その後水分や食事はとれているか

・下痢・便秘・おならの有無

・お腹のはり・腹痛の有無

・食後から嘔吐までの時間、頻度

・嘔吐した時の状況

・周囲に同じ症状が出た人がいるか など

これらを医師や看護師に伝えるとスムーズです。

3.胆汁の逆流

胃液は通常、透明〜やや黄色の液体です。
吐いたものが液体で黄色や緑色をしている場合は、胆汁が逆流して嘔吐している場合があります。

胆汁は、肝臓で作られ、胆のうに蓄えられた消化液です。脂肪の消化を助けます。
黄色や緑色の胆汁を含む嘔吐は、胃の内容物が空になった後に吐き続けている(空吐き)状態や、腸閉塞(イレウス)・消化管の通過障害の可能性もあります。

私の娘は、体調が悪いと必ず”胆汁”が胃残に含まれています。

主な原因背景
黄色い胆汁胆汁が比較的新しく、小腸や胃に入ってすぐ吐き出された場合ビリルビンが酸化していない状態
緑色の胆汁胆汁が腸内や胃内に長くとどまり、ビリルビンが酸化してビリベルジンに変化胆汁が時間経過で化学変化を起こした状態

4.嘔吐時の対応

  • 誤嚥を防ぐため顔を横に向ける
  • 誤嚥していないか確認(ゴロゴロ音がする、むせ、咳、SPO2低下、嗄声)必要時吸引・肺音確認
  • 膝を曲げて足の下にクッションをいれる。腹筋をゆるめ、腹圧がかからないようにする
  • 衣服をゆるめて呼吸を楽にする
  • こまめに水分をとる(それにより再嘔吐があれば無理せず受診)
  • 嘔吐後は嘔吐を誘発しない程度に口腔ケア(口腔内に吐物や匂いが残ると再嘔吐や細菌繁殖の原因に)
  • 体力回復のために休息をとる
  • 誤嚥徴候や繰り返すようであれば医師に相談 など

★こちらもご覧ください★

脱水になった場合、「水」だけ大量の補給は
危ないです!


5.イレウスの場合は便処置禁止

みなさんは、イレウスという言葉を聞いてことはありますか?

ロタウイルスワクチンを経口で内服するとき、副作用として腸重積(機械的イレウスの一種)について説明を受けた方も多いのではないでしょうか。

イレウス(腸閉塞)とは、腸の内容物(食べ物・消化液・ガスなど)が何らかの原因で通過できなくなった状態を指します。
そのため症状として、腹痛・腹部膨満・嘔吐・排便異常などの症状が現れます。

1)種類

  1. 機械的イレウス:腸そのものが物理的に塞がれている状態
    • 原因例:腸の癒着、腫瘍、腸捻転(ねじれ)、腸重積、異物など
  2. 機能的イレウス(麻痺性イレウス):腸が動かなくなり、内容物が進まない状態
    • 原因例:腹膜炎、手術後、重い感染症、電解質異常

2)イレウスの場合、便処置をしてはいけない理由

1.腸の内圧があがり、穿孔する可能性がある:
・イレウスでは、内容物が通過できず、腸管がすでに膨らんでいます。
・そこに浣腸液や薬剤を注入するとさらに内圧があがり、腸壁が破れる可能性があります。
・また破れたことで、腸の中身が漏れて、腹膜炎や敗血症を引き起こして命にかかわります。

2.閉塞部位が悪化する可能性がある:
・浣腸液や薬剤を注入すると、腸の動きを刺激して、さらに閉塞部位に負担がかかります。
・その結果、腸の血流障害悪化や壊死する可能性もあります。

腹痛がある場合も、便処置をすることで痛みが増す可能性もあるので注意が必要です。

6.嘔吐が治らないときの我が家の対応

嘔吐がおさまらず、ミルクが飲めない場合(娘は経管栄養です)、病院もしくは訪問診療医師に連絡して相談します。

訪問診療の医師は検査ができないため、救急搬送が必要ではないが検査が必要な症状の場合、我が家では直接病院に連絡することにしています。

私たちは、今まで嘔吐症のため2回入院、1回外来受診後自宅に帰ったことがあります。

はじめに外来を受診し、医師による診察を受けます。
その後、必要に応じて採血・レントゲン・エコーを実施します。
採血:異常がないか、脱水や栄養不良ではないかなど。
レントゲン:胃管の位置、肺炎の有無、ガスや便の貯留など。
エコー:イレウス、異常はないかなどの確認をします。

その後、入院するか自宅に帰るかを医師と相談します。

入院する場合
採血をまだ行っていなければ入院時に実施します。入院初日は点滴で絶食とし、翌日からミルクを徐々に増やしていきます。
また、レントゲンやエコーでイレウスが否定され、便やガスの貯留が認められた場合は、浣腸液や導気(カテーテルを肛門から挿入してガスを排出する)を行う指示が出ます。
さらに、六君子湯・ガスモチン・ファモチジンの内服が開始されました。

自宅に帰る場合
このときは腹部にガスや便の貯留もなく、原因は不明でした。一旦、ミルクを薄めたり、ソリタ水を投与して様子を見るよう指示がありました。
イレウスや腹部の問題ではないことが分かり、安心しました。

7.胃食道逆流症(GERD)とは

私の娘は”胃食道逆流症”と診断されています。
これは、胃から食道へ胃酸や内容物が逆流し、日常生活に影響を及ぼす状態です。

呑気症(空気を飲む)や便秘、お腹にガス溜まりやすい、もともとお腹の動きが悪いことに加えて
胃食道逆流症があるため嘔吐が起きると診断されています。

8.医療的ケア児が発症しやすい要因

医療的ケア児は、身体的特徴や医療的処置の影響で胃食道逆流(GERD)が起こりやすい傾向があります。主な理由は以下の通りです。

1)下部食道括約筋の機能低下

  • 筋力低下(全身の筋緊張が弱い場合)
  • 先天的な奇形(食道・胃の構造異常など)など

2)腹圧の上昇

  • げっぷがうまくできない
  • 便秘
  • 前かがみの姿勢が多い
  • 泣く、くしゃみなどの瞬間的な腹圧上昇
  • 急な栄養投与による胃の膨張など

3)胃の排出遅延

  • 神経疾患による胃の動きの低下
  • 胃自体の蠕動運動が弱いなど

4)横隔膜や胸郭の形態異常

  • 側弯や胸郭変形により、胃と食道の位置や角度が変わり逆流しやすくなる

5)経管栄養による影響

  • 栄養中の体位(頭が低い体位/足が突っ張っているなど)
  • 経腸栄養を長くすると、下部食道括約筋が常に少し開いた状態になりやすい
  • 栄養剤が液体
  • 栄養回数・量が合っていない

6)人工呼吸器による影響

  • 呼吸器の陽圧換気が腹圧を上げることもある

7)胃内容物や胃酸の性状変化

  • 栄養剤の種類や温度、濃度によって胃の刺激や排出スピードが変化

8)嚥下機能の低下

  • 嚥下障害で唾液や逆流物をうまく飲み込めず、逆流症状が悪化

9.主な症状

  • 胸やけ
  • ゲップ
  • 口の中が酸っぱい
  • 慢性的な胸痛
  • 咳や喘息様症状
  • 耳痛など

共通や不快感があっても、自分で訴えられないお子さんも多くいます。

10.一般的な予防・対策

  • 摂取量を少なくし、回数を増やす
  • 食後は30度程度のリクライニング姿勢
  • 前かがみや強い腹圧を避ける(便秘対策も重要)
  • 栄養剤の種類を変更する、経管栄養(EDチューブ)を検討
  • 薬物治療
  • 脂肪の多い食事、コーヒー、アルコール、柑橘類、チョコレートなど胃酸分泌を促す食品、甘いものの過剰摂取を控える

11.経管栄養チューブの種類と違い

嘔吐や逆流が強い場合、経管栄養の留置場所を変更することがあります。

項目NGチューブ(経鼻胃チューブ)EDチューブ(経鼻十二指腸チューブ)
挿入部位鼻 → 胃鼻 → 胃を通過 → 十二指腸
主な目的胃へ直接、栄養や薬を注入胃を通らず腸へ直接、栄養を注入(逆流・嘔吐の軽減)
適応例一般的な経管栄養、短期〜中期の栄養管理胃食道逆流が強い、嘔吐・誤嚥のリスクが高い場合
栄養の流れ胃に一度たまってから消化・排出される腸に直接届くため胃での滞留がない
交換の目安1週間〜2週間(病院のルールや材質による)1か月程度(病院で医師がいれる)
栄養投与スピードその子に合わせてゆっくり
注意点胃食道逆流や嘔吐が起きやすい挿入位置の確認が必要(X線やpH測定など)

EDチューブには、嘔吐しづらいというメリットがあります。
一方で、胃の機能が使われなくなること、挿入には病院で医師が行う必要であること、そしてダンピング症候群を予防するための注意が必要といったデメリットもあります。

ダンピング症候群は、胃を通らずに食べ物や栄養が一気に腸へ流れ込むことで起こる症状です。
胃には本来、食べ物を少しずつ腸に送る“調節機能”があります。
しかし、胃を通らずに直接小腸(特に空腸)に入ると、急激に浸透圧の高い内容物が流れ込み、腸内の水分移動やインスリン反応が急激に起こります。症状としては、腹痛・下痢・血圧低下・低血糖症状などです。


12.娘の現在の治療

1)内服治療と外科的治療

私の娘は現在、内服治療をしています。六君子湯・ガスモチン・ファモチジンを内服しています。
それでも、嘔吐は毎日2回ほどあります。
嘔吐の頻度が増えたり、誤嚥性肺炎になりそうであったら、外科的治療を検討することになっています。
外科的治療の一つ目は、胃の入り口をしばり、嘔吐しづらくする手術です。二つ目は、胃ろうをつくる手術です。呑気症(空気を飲む)があるため、胃ろうだと空気を回収しやすいというメリットがあります。また、胃ろうだと半固形の栄養剤を注入することができるので、逆流リスクが減ります。

2)胃の造影検査

胃の造影検査を行うことで、胃に何ml内容物が貯められるのか分かります。私たちは、一度すすめられて現在も検討中です。

3)生活習慣

  • 姿勢の工夫:ミルク注入中は上体を起こし、膝の下にタオルを入れてやや屈曲させる。
  • ミルクは1日6回、回数はまだ減らさない。
  • 1回のミルク量を増やす際は嘔吐に注意する。
     (我が家では半分の量を注入した時点で30分あけ、残りを投与しています)
  • 内服は忘れずに服用する。
  • 体調が悪いときはミルクを薄めるか、ソリタ水に切り替える。
  • 便処置をしっかり行う。
  • それでも改善がみられない場合は受診する。 ことをしています。

13.受診を検討すべきサイン

  • 嘔吐が繰り返し続き、ミルクが飲めない
  • 血液やコーヒー残渣様の吐物
  • 強い腹痛や腹部膨満
  • 意識がもうろうとしている
  • 呼吸が苦しそう
  • 発熱や咳が長引く,SPO2の低下
  • 急な体重減少
  • 嘔吐後にぐったりする など


14.おわりに

「赤ちゃんは吐くものです」と医師から言われることがありますが、嘔吐には赤ちゃんでもさまざまな原因があります。
少しでも不安を感じたら受診し、それでも納得できない場合は、セカンドオピニオンを検討するのも良いと思います。

他の医療者に相談すると、思いがけない解決策が見つかることがあります。
一度で答えが出なくても、立場や経験の異なる人に聞くことで、新しい視点や方法に出会えるかもしれません。

同じように嘔吐や逆流で悩む方の苦痛が、少しでも軽くなる方法が見つかりますように。

★参考になったらクリックお願いします。応援していただけると嬉しいです

にほんブログ村 子育てブログ 障がい児育児へ
にほんブログ村

Tags:

Categories:

No responses yet

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です