毒親って本当に“毒”? 家族に悩んだ私がたどり着いた、支え合う家族のかたち

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毒親って本当に“毒”?
家族のかたちに悩んだ私が、今思うこと


毒親という言葉が一時期話題になりました。
過干渉、無関心、感情的な支配。
親からの言葉や態度が“毒”になってしまう現実に、多くの人が共感しました。

「親だからって、なんでも許されるわけじゃない」
「親子でも、距離を取ることが必要なときもある」

そんな声が広がったことで、救われた人もいたはずです。

でも、ある知り合いの編集長がこんなふうに言っていたのを覚えています。

「最近は、家族の関係がどんどん希薄になっている。
毒親問題で、親と距離を取る人が増えてきた。
必要なことかもしれないけど、ちょっと寂しいよね。
家族ってなんだろう」

たしかに、家族の絆は我慢や犠牲のうえに成り立つものではありません。
だけど、家族だからこそ築ける関係のあたたかさもある──
そんなふうに、私は思っています。

今回は、医療的ケア児の育児を通して実感した
「家族の距離感」「役割」「すれ違い」について、少しお話しさせてください。


1.私たちのエピソード

◇家族でも、心の時間はそれぞれ違う

娘には心臓の病気があり、医師からこう言われたことがあります。

「手術をしなければ、今年は乗り越えられないかもしれません」

私は「やるしかない」と思いました。
すぐに覚悟を決めて、手術の準備を進めようとしました。
焦っていました、はやくやらないと後悔する!

でも、夫は悩んでいました。

つい私は「今こんなに大事な時なのに、なんですぐ決めてくれないの?」と焦ってしまって…。
「娘の命がかかってるんだよ」と言いたくなる気持ちもありました。

でも、あるとき気づいたんです。
私は、先に“現実”を受け入れて、心の準備ができていただけなんだと。

夫には、夫のペースがあった。
彼にはまだ、気持ちの整理に時間が必要だったのです。

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◇私の決断が、夫の人生を変えてしまう?

そんなとき、親族からこんな言葉をかけられました。

「夫の人生についても考えなよ。一人では育てられないんだから。」

正直、ぐさっときました。
「この子の命より、大切なことなんてあるの?」と叫びたくなる気持ちもありました。

でも──それもまた、ひとつの現実。

夫の趣味は旅行でした。
医療的ケア児がいたら、今までのようには出かけられないかもしれない。
私の決断が、夫の人生を左右してしまう。
そう思うと、怖くなって言葉に詰まりました。


◇「趣味のことは考えなくていいよ」──夫の言葉

それでも、勇気を出して話し合いました。

「私は手術をしてあげたい。でも、あなたの気持ちもちゃんと聞きたい」

すると夫はこう言ってくれました。

「趣味のことは考えなくていいよ。この子のことを考えてあげよう。
それに、もしかしたら一緒に旅行できるかもしれないじゃん」

家族って、答えを合わせることよりも、まずは歩幅を合わせることが大切なのかもしれません。
私が一方的に進めていたら、押し付けになり、お互いの距離は離れていったと思います。


2.家族のかたちは、みんな違っていい

私たち夫婦は、今回考えのスピード感が異なり、すれ違うこともありました。
この経験のおかげで、今後は一方的な主張にならないよう気をつけようとなりました。

SNSを見ていると、「母親だから」「きょうだいなんだから」と、
無意識のうちに期待や役割が押し付けられたという投稿をみかけます。

”母親なんだから、仕事をやめて育児をするのは当然。”
”育児は誰でも大変なんだから頑張るのは当たり前”
”きょうだいは医療的ケア児のお世話をして当然”と言われたなど…

でも、それで誰かが犠牲になるような家族のかたちは、続かないと思うのです。

誰かの押し付けが、誰かを追い詰めてしまうこともある。
だからこそ、対話や、お互いの“今”を尊重することが何より大切なのだと、私は実感しています。

3.家族の“役割”ってなんだろう?

かつては、家族の役割といえば明確でした。

  • 父親は「働く」
  • 母親は「育てる」
  • 子どもは「親に従う」

でも、今は時代も価値観も変わってきています。

特に医療的ケア児の育児では、
「誰が主になるか」ではなく、「どう分担し、支え合うか」「どんな夢や理想があるか」が鍵になります。

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4.私たちが家族でいるために、大切にしたいこと

1. うちはうち、よそはよそ

母親は我慢強くて、いつも笑ってて、子どものためにすべてを捧げる。
父親は仕事に集中し、休日には頼もしく家族を支える。
祖父母は優しくて、でも口を出しすぎず、見守ってくれる存在──
そんな“理想の家族像”に、知らないうちに縛られていませんか?でも現実は、泣く母親もいるし、迷う父親もいる。
愚痴を言う祖父母もいれば、きょうだいが怒ることだってある。それでいいんです。

ステレオタイプから抜け出して、
「うちはうち、よそはよそ」って思える家族をつくっていきませんか?

2. “できるときにできる人がやる”という柔軟さ

ケアにしても家事にしても、「どちらが何をやるか」「何をどうするか」を固定しすぎると、苦しくなります。
負担の波があるなら、その時その人にできることで支える、それで十分。
医療的ケア児の育児や介護、
そして家族を守らなきゃって思う日々のなかで、
「ちゃんとしなきゃ」「しっかりしなきゃ」って、
無意識に自分を追い込んでしまうこと、ありませんか?

でも──

しっかりしようとするのは無理だった。
手を抜いて、リラックスしたら、家族と笑える時間が増えた。

そんな経験が、私にはあります。
🪞手を抜くのは、サボりじゃない。守ること。

  • 「今日はごはん、冷凍パスタでいいや」
  • 「掃除は明日でも死なない」
  • 「ケアは大事。でもママの体も大事」

力を抜くことは、自分と家族を守る手段。
心も身体もギリギリでは、優しさも愛情も出てこないから。


3. 居心地の良さ

肩の力を抜いたら、
意外と夫がケアを覚えようとしてくれたり、
子どもが笑ってくれたり、
「できてない」と思っていた自分が、
本当はすごくがんばってたことに気づけたりする。「ちゃんとする」よりも、
「いっしょにいられる空気」を大切にしたいなって思うようになりました。

4. 無理をしない。やりたいことをやる。

ときには「もう無理」「助けてほしい」と言える。
逆に「ありがとう」「よくがんばってるね」と言える。
「これやりたい」「これはやりたくない」。
感情のやりとりができることが、家族でいる意味になるのかもしれません。

そして「こうしたらできるようになるかも」と、一緒に方法を考えられる関係でありたいです。

5.短所でなく長所をみつめる

人は誰しも、完璧ではありません。家族の中でも、苦手なこと・できないことはあって当然です。あの人は口うるさいけど、細かいところに気がつく。私はすぐ感情的になるけど、だからこそ寄り添える気持ちがある。

“できないところ”ではなく、“できているところ”“その人らしい部分”に目を向けることが、家族を信じることにつながっていくと感じています。

6.思いやりと想像力

家族といっても、それぞれに感じ方も考え方も違います。
特に医療的ケア児を育てていると、「どうして分かってくれないの?」と思う瞬間も多くあります。

でも、ふと立ち止まって
「この人はどう感じているんだろう」
「同じ立場だったら、私ならどうするだろう」──
そう考えてみるだけで、心の余白ができて、言葉の選び方が変わってきます。

母親としてのプレッシャー、きょうだいとしての我慢、父親としての葛藤、祖父母としての心配。
みんなそれぞれ、**“その人なりのがんばり”**があるんですよね。

うまくいかないときこそ、
「こうあるべき」ではなく「どう思ってる?」と問いかけること。
そして、思いやりの視点で“その人の今”を見つめること。

それが、家族の中で信頼を育てていくための、はじめの一歩だと思います。


5.家族は、決して“完璧”でなくていい

家族は、必ずしも「仲良し」でなくてもいい。
「助け合いながらでも、ぶつかりながらでも、いっしょに考える」
そんな関係こそが、家族の本質なのかもしれません。


おわりに

「毒親」という言葉が広がった背景には、
“家族のなかで孤立していた人”が、たくさんいたことがあると思います。

でも同時に、家族ってやっぱり──
一緒に悩んでくれる存在、一緒に泣いてくれる存在でいてほしい

家族の役割に正解なんてありません。
大切なのは、頑張ってひとりで決めすぎないこと。
これは大人が相手でも、子どもが相手でもそうです。
立ち止まりながらでも、同じ方向を見つめていけること。
それが、私にとっての「家族のかたち」です。

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